What's SciCom

産業保健研究のイノベーション基盤としての科学コミュニケーション・ツール
SciCom -Atlas of Occupational Health-

エビデンスは様々な研究によって作られますが、「エビデンスの8割は社会実装されていない」と言われています。
産業保健研究の社会実装を加速させるためには、学術研究者、実務者、一般市民、サービス事業者、行政などの各ステークホルダ間での科学コミュニケーション(science communication)を促進することが不可欠です。
そこで、日本産業衛生学会内の学術委員会・編集委員会・広報委員会の合同により、オープン・サイエンス・コミュニケーションの基盤となるオンラインサイトを開発しました。
それが、SciCom(サイコム)です。

 

SciComのねらい

SciComは、世界的なオープン・サイエンス戦略に対応すべく、学術のオープン化による「知の集積・活用」を通じて、学術の実践応用の加速とイノベーションを創発させるために用意しました。

そのねらいは大きく2つあります。

第一に、産業保健研究の知見を分かりやすい形で広く活用できるようにアーカイブ化(リポジトリ)し、誰でも利用可能にすることです。オープン・サイエンス時代の今日では、研究論文に誰もがアクセスできるように環境整備が進められています。しかしながら、一般市民や分野外の専門家にとって、論文内容を短時間で概観することは困難です。
そこで、SciComでは、論文の内容を平易に要約した記事である「レイ・サマリー(lay-summaries)」、論文の概要をイラストで解説する「インフォグラフ(infographs)」、および研究の概要を紹介するビデオである「ビデオ・ショート(video shorts)」の3コンテンツをベースとした記事構成によって、産業保健研究のトレンドや概要を素早く把握できるよう工夫しました。

第二に、産業保健研究による「知の創造の加速」です。第5期科学技術基本計画(Society 5.0)や総合科学技術イノベーション戦略2017などでも唱われているように、イノベーション創出のためには、国内外への「知」の社会実装は急務とされています。産業現場の社会課題に対応する新たな産業保健研究のイノベーションを創出するためには、境界領域での化学反応が必要です。
アイデア発想法の父とも呼ばれるJames W. Youngによれば、イノベーションの源泉となるアイデアの原理は「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ」であり、多様な学問領域・専門領域の知識にふれ、自らの領域にそれらの視点を応用することから創出されます。産業保健の各領域で行われている研究動向やトピックにふれ、イノベーションの源泉としてSciComを利用頂くことを期待しています。

掲載記事のリソース

  • 日本産業衛生学会が発行しているJournal of Occupational Health、Environmental and Occupational Health Practice、および産業衛生学雑誌の3誌に掲載された論文をリソースとしています。
  • 日本語のリソースについては、編集委員会または著者本人から提供された英文レイサマリーの原文記事をDeepL自動翻訳を用いて翻訳しています。
  • インフォグラフは編集委員会または著者から提供されたものがあればそのまま掲載しています。インフォグラフがない記事については、レイサマリー記事内のキーワードを用いて画像生成AI(DALL-E2)を用いて作成・掲載しています。
  • ビデオ・ショートは編集委員会または著者から提供されたファイルをyoutubeのプラットフォームへアップロードし、組込掲載しています。
  • Editor's choiceは、Journal of Occupational Health、Environmental and Occupational Health Practice、および産業衛生学雑誌のEditor-in-chief(EIC)が特に紹介したい論文をピックアップしたものです。

現状の情報アクセスモデルとSciComモデル

現状

研究者は学術情報へアクセスするためにインターネットを介して学術データベースまたは学術雑誌のサイトへアクセス。それら学術データベースを通じて学術論文にアクセスすることが可能だが、一般の方にはほとんど利用されない。

SciComモデル

Lay-summaryやインフォグラフをベースとしたポータルサイトを日本産業衛生学会が用意。その記事はSNSへ投稿しポータルへとアクセス頂く。
一般の方々に産業保健研究を広く知ってもらうと同時に、産業保健関係者間のコミュニケーションツールとしても利用される。
SciComには産業保健研究の概要記事がアーカイブされ,国内外の産業保健関係者(実務者·研究者)、学術関係者(産業保健領域以外の研究者など)、サービス事業者、行政関係者などに利用頂くことでイノベーション創出を支援する。

 

本サイトの想定される利用者

本サイトの主要な利用者は、国内外の産業保健関係者(実務者・研究者)、学術関係者(産業保健領域以外の研究者など)、サービス事業者、行政関係者を想定しています。二次的な利用者として一般市民や学生などを想定しています。

 

SciComの名称略記について

SciCom(サイコム)は科学コミュニケーションの略記(Science Communication)であると同時に、下記の意味も込められています。

S: Stakeholders
産業保健関連の科学知見を国内外のステークホルダ(一般市民、他領域の研究者、実務者、行政、企業等)に知ってもらい、産業保健への関心の喚起をはかる
C: Communication
コミュニケーションで科学情報の分野間・ステークホルダ間の双方向性を担保することにより、産業保健研究の推進をはかる
I: Internet
一般市民に広く普及しているインターネットを通じて、「理論」と「実践」の橋渡しのための基盤を提供し、トランスレーショナルリサーチ(基礎研究を現場で活用できる技術へ繋げる「橋渡し研究」)の加速をはかる
C: Commons-innovation
市民科学(citizen science)の実践の場として、市民から課題の提案や意見を発信してもらい、産業保健研究のイノベーションを加速させる
O: Open-science
多様な学問領域に産業保健研究の知見を利活用してもらうことで、産業保健の地位向上をはかる
M: Media
学術論文の社会的影響度を高める戦略として、学術知見へのポータルとして活用する

 

企画・制作・運営      

本サイトは、日本産業衛生学会学術委員会が企画し、編集委員会・広報委員会と連携の下、運用を行っています。

 

■学術委員会 科学コミュニケーション・ワーキンググループ

榎原  毅(産業医科大学・人間工学) 

辻  真弓(産業医科大学・衛生学)

久保 智英(労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所)

武林  亨(慶應義塾大学・衛生学公衆衛生学)

 

■運営協力

谷  直道(産業医科大学・人間工学)