#0001 災害後の労働者の心理的ストレスを軽減するには職場の上司とのコミュニケーションが有効

メンタルヘルス/心理社会的要因

災害後の精神的苦痛を軽減するために何が有効か?


 2011年に東日本大震災が福島第一原子力発電所を襲った後、近隣の自治体から多くの住民が日本政府によって指定された地域に避難しました。しかし、これらの人々の何人かは、仕事のために一時的に避難地域に戻ることを許されました。災害は労働者の精神的苦痛のリスク増大の原因となります。そこで、災害後の仕事関連のストレスを軽減するためにはどのような方策が有効なのかが調べられました。


 今までの研究で、効果的な職場のコミュニケーションが労働者の苦痛を軽減することが分かっています。この研究では、災害後に避難地域で働く労働者についても同じことが言えるかどうかが調査されました。また、避難地域の労働者と非避難地域の労働者の職場と生活環境も比較されました。

 3つの中規模製造会社(避難地域から2つ、非避難地域から1つ)に勤務する労働者(合計647人)から災害後の職場環境と家庭生活の変化、上司や同僚との交流、そして彼らが経験した心理的苦痛についての情報が質問票を用いて集められました。


職場の労働者と上司とのオープンなコミュニケーションが苦痛を軽減


 避難地域の労働者は、労働負担の増加、残業、不規則な時間に食事をとる機会が非避難地域の労働者と比べて多くなっていることがわかりました。 また、心理的苦痛を経験している労働者の割合は避難地域で62.6%(非避難地域の労働者の46.8%)と高い値を示しましたが、管理職や上司と効果的にコミュニケーションをとった労働者では心理的苦痛のレベルが非常に低いということがわかりました。


 これらの調査結果は、災害が家庭生活や職場環境に影響を与え、労働者の負担を増大させる可能性があることを示しています。 しかしながら職場の管理職や上司がオープンなコミュニケーションを行い、積極的な支援を行うことができれば、災害後も労働者の苦痛は大幅に軽減されることが分かりました。


 

元のジャーナル記事へのリンク:
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/1348-9585.12074


この記事のタイトル:
The association between effective workplace communication with superiors and lower psychological distress among workers in the evacuation area after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident


著者:
Masatsugu Orui, Seiji Yasumura


DOI:
10.1002/1348-9585.12074

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